Music: chinese song 3
遥かなるシルクロード
カレーズ
カレーズ(坎児井:カナート)
カレーズとはペルシャ語で「地下水」を意味するらしい。トルファン(吐魯番)の生命線、天山山脈からの雪解け水が、砂漠の
下を流れる地下水路のことを言う。トルファン・ハミ(哈蜜)・アクス(阿克蘇)3地区に多いが、特に吐魯番盆地が最も多い。
盆地の傾斜を利用し、高い所に井戸を掘り、そこから天山の底を流れる地下水を暗渠を通して、その同位にある地上に水を引く
という方法で、飲料水、生活用水に用いられてきた。
私はここへ来るまでカレーズについてはまったく知らなかった。ガイドの董さんが「カレーズ」というのを聞いて「え、カレー
屋に行くん?」と思ったほどだ。しかし調べてみると、カレーズというのは中国の地下水路だけを言うのではなくて、世界中の
地下水路をカレーズと呼ぶのだそうだ。カレーズはイランでカナート、北アフリカはフォガラ、中近東ではファラジと呼ばれて
いる。これらは構造的にまったく同じものだそうである。
トルファンのカレーズは、井戸は最も深いもので67m、長さは普通3km、最も長いものは10kmで、トルファンには約
1500本のカレーズが掘られ、縦横総長4000kmと言う。構造は簡単であるが、水量は安定しており、水の蒸発を防ぐ
ことが出来る。トルファンの人口約18万人は、古代からこのカレーズによる水の恩恵で日常生活を送り、約3万haの耕地
が緑に覆われ、白葡萄、ハミ瓜、長繊の綿花などが実る美しい町になったのだ。中国では、古代の三大工事として有名だそう
である。万里の長城。秦の始皇帝陵。そしてここトルファンのカレーズだそうだ。
天山山脈に降った雪解け水が、砂漠の下を幾筋もの水脈になって流れている。それを探り当てて吸い上げるのである。しかも
動力は用いず、自然の物理的な法則のみで地上へあげるのだからすごい。人間の知恵はすごいよなぁ。
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ブドウ畑の中に観察園があり、カレーズに関する古資料や、作業工具などが陳列してあり、また野外では実際にカレーズを観光
用に整備してある。カレーズを保存し、その有効利用を奨励した、故ケ小平氏の文書もパネルに掲げてあった。
人々がどうやって水を吸い上げたかを、模型を使って説明してある。
カレーズ(カナート)は、帯水層にとどく母井戸(あるいは母井戸群)と、それぞれから得られる地下水を灌漑地や集
落まで導水するための地下水路、工事やメンテナンスのための竪孔群からなっている。竪穴群の間隔は20〜30m、
地下水路の長さはトルファン地域のカレーズでは、数kmから10数kmが普通であるが、イランでは40km以上に
達するものがあるという。また母井戸の深さは100mに達するものも珍しくはない。
手の届くところに葡萄の房が垂れ下がっているが、日本と違って誰も取っていない。
カレーズの天窓とそれを下から見たところ(下右)。
竪孔の直径は1〜1.5m、また地下水路の大きさは大人が屈んでやっと歩ける程度である。もっとも地下水路は自然に崩れて
拡張してくるので、崩落土砂を排出するたびに広がり、中にはトラック1台がすっぽりおさまるぐらいにまでになってしまっ
たものもある。
中国ではゴビ、アラブではBajadaと呼ばれる礫平原地帯が、竪孔や地下水路の掘削対象になるが、これが非常に硬く、トルフ
ァンの例では数人の大人が1日に掘削できる量は1m程度にとどまるという。したがって1本のカレーズを仕上げるためには
気の遠くなるような日数を要することになる。まさに水を得るための執念がこれを可能にしたといえる。
一体いつ頃からこの水路が掘られたかについては、現在でも確たる証明はなされていないようだ。
中国から帰国した翌朝、朝7時のnewsを見ていたら「アジアンワールド」というコーナーでこのカレーズの特集をやっていた。
wifeが呼ぶので居間へ行って見ると、見慣れた葡萄棚や水路が画面に映し出されていた。早速デジカメで二重取りした。以下
がその写真であるが、現在カレーズは水量が少なくなって危機に瀕しているという内容だった。ガイドの董さんはそんな事一
言も言ってなかったなぁ。現地の「守る会」の会長さんは、「このまま水が涸れたら当然住民は街を捨てなければいけない。」
と言っていた。
邪馬台国大研究 / 吐魯番(トルファン)/ カレーズ