Music: Never falling love



茨城県ひたちなか市
2005.9.4(日)







	ホテルからタクシーで、「反射炉跡」「十五郎横穴」と廻ってもらってここへ来た。運転手さんは「待ってましょうか。」
	と去りがたい雰囲気だったが、どのくらいかかるのかわからなかったので帰ってもらったが、「そうですかぁ。」と残念
	そうだった。そんな上客でもないのになぁ。

	事前にmailを入れておいたら、ここの所長の鴨志田(かもしだ)さんが待っていてくれた。珍しい名前の鴨志田さんは、
	旧勝田市に就職して文化財関係一筋の考古学者である。珍しい名前なので何かの本でお名前だけは知っていたような気が
	するが、名詞をいただくまで、ここの所長さんだとは知らなかった。ひたちなか市の多くの発掘にかかわってきたが、な
	かでも有名な「虎塚古墳」の発掘には最初から関わり、一番最初にこの古墳の壁画を見た人なのだ。そのあたりの話は、
	このHPの最後に写真がある「虎塚古墳:鴨志田篤二著(同成社刊)」に詳しい。発見時には、明治大学の大塚初重教授
	と手を取り合って喜んだと書いてあった。






	事務室で挨拶して一通り話を聞いた後、鴨志田さんが展示室を案内してくれた。きれいに整理された展示室に、沢山の出
	土品があふれていた。森浩一氏も書いているが、ちょっとした博物館である。




	上は古墳時代後期、今から約1500年ほど前のわらじである。もうわらじを履いていたのだ。しかもそれが、ほぼ15
	00年も変わらない形で使われ続けてきたのも驚きである。何か改良されてもよさそうなものだが、私が子供の頃のわら
	じと殆ど同じである。

 




上が、森浩一氏が釘付けになったという「乳飲み子を抱く埴輪」である。解説は同志社大学名誉教授にゆずる。














	虎塚古墳から出土した武具・馬具の類。ほんとに全国の古墳の画一性には驚く。たまには弥生土器や縄文時代の腕輪など
	が出土してもよさそうに思うが、そんなものは一切無い。古墳時代にはその時代のものしか、古墳に埋葬していないのだ。
	これは、小林行雄の言う「伝世鏡」などという考え方がまったく成り立たないことを示している。古墳に収納されている
	副葬品は、その時代に被葬者が身の回りにおいていたものを対象としている。100年前の鏡などを副葬するはずがない
	のである。





 



 













二つの土器についた指紋が同一人のものだったという、全国的にもきわめてまれな出土例。

 

 











 





上は、奈良飛鳥の高松塚古墳の石室レプリカ。










	茨城県も石器が多い。石器といえば思い出す、例の藤村新一問題は、ここには影響なかったのかと聞いてみたら、な、な
	んと、鴨志田さんは藤村新一とは友人だったという。「経済的援助もしてたんですけどねぇ。」とつぶやくのを聞いて、
	それ以上の質問はできなかった。









九州の壁画古墳の所在地と、石室内の壁画が紹介してある。学術的にも九州との類似性は注目されているのだ。

 

東北の壁画古墳は、太平洋側に集中している。これは九州からのルートが海路だったことを物語っているのではないだろうか。











三反田貝塚から出土した遺物の数々。人骨も出土している。



 

 

 

 

 

 









	下左は、ここで購入したガイドブックといただいたパンフレット。そして上に載っているのが鴨志田さんの最新の著作で
	ある「虎塚古墳」。下右は、ここで発行されている「ひたちなか市 埋文だより」に乗っていた写真。今から約10年ほ
	ど前で、左から2番目が鴨志田さん。フィールドノートは、漫画入り、イラスト入りで、おもしろく古代史解説がしてあ
	る。なかなかのスグレものである。

	フィールドノート

	船窪遺跡群,向野遺跡群,武田遺跡群の調査成果を中心に市内の埋蔵文化財に関する話題を,イラストと写真を多用し
	てわかりやすく解説した広報誌ができました。市内の各施設で無料配布しています。なお郵送をご希望の方は,郵送費
	実費負担にて配布しますので,下記までご連絡ください。 

	配布場所 埋蔵文化財調査センター,文化会館,総合・松戸・那珂湊各体育館,市役所本庁舎ロビー,那珂湊支所ロビ
	ー,ふるさと懐古館,武田氏館,前渡公民館,中央・那珂湊・佐野各図書館,ワークプラザ勝田 
	郵送ご希望の方   電話029−275−4623 文化財調査事務所 

下左も、同じく「埋文だより」から。右は前出「虎塚古墳」からの転載で、虎塚古墳の内部を調査している鴨志田さんである。若い。




	下の記事は、事務室で韓国の前方後円墳の話になったとき、鴨志田さんがくれたもの。「いばらぎ新聞」に書いたものだ
	が、私と同様、韓国のものは日本の前方後円墳とは印象が違うと書いている。私は実際見てきた印象から言うと、まった
	く別物だと思う。他にもいろいろ話したが、専門家とこういう話ができて望外の喜びだった。楽しい時間であった。





	下が、お会いしたときに鴨志田さんが、「こんど出る本です。」とおっしゃっていた本である。大阪堂島のジュンク堂で
	購入した。発見時のいきさつから、壁画の分析、比較等々、虎塚古墳に関するあらゆることが載っている。オビに「調査
	の第一人者である著者ならではの」と書いてあるがそのとおりである。読んでいると発掘現場の雰囲気が伝わってくる。

 



	書籍名  : 虎塚古墳 関東の彩色壁画古墳  シリーズ名 日本の遺跡 3
	著者   : 鴨志田篤二/著
	出版社名 : 同成社 
	発行年月 : 2005年10月 	46判・178頁 版型 172P 20cm ISBNコード 4-88621-333-2 C3321
	価格(税込): 1,890円 
	解説   : 東日本には珍しい彩色装飾壁画を持つ前方後円墳で、わが国における石室内保存科学調査のさきがけとなった
		   遺跡の全貌を、壁画発見の最初から調査に携わってきた著者が詳細に語る。 
	目次 
	1 虎塚古墳の位置と歴史的環境
	2 虎塚古墳および周辺の調査史
	3 虎塚古墳の調査
	4 虎塚古墳の規模
	5 石室の構造と出土遺物
	6 壁画の構成
	7 保存科学調査
	8 虎塚古墳壁画とその背景


	この後、すぐ隣にある虎塚古墳を案内していただいて、車で三反田貝塚、馬渡埴輪製作遺跡と廻ってもらった。


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