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博物館について語ろう
東京国立博物館は,まだ日本に博物館が存在しなかった明治5年(1872)3月、我が国初の博物館として誕生した。4つの展示館、本館・東洋館・平成館・法隆寺宝物館を中心に、日本と東洋の美術・考古遺物が一般公開されている。また,美術に関連する図書等の資料は研究者などに公開されている。
各展示館はそれぞれに素晴らしい展示物が並んでいるが、私が訪れるのは考古遺物を展示している「平成館」である。その名の通り、平成11年になって開館した展示館で、その前は「表慶館」という建物が考古館だった。今も、入り口から入って平成館へ向かう左側に表慶館はある。丸いドーム型の屋根を持った、石垣に似たレンガ作りの古色豊かな建物で、私はこの建物の方が好きである。

私は平成元年から3年まで東京勤務だった。住居は流山だったが会社は茅場町にあった。営業職だったのでよくサボってはここに来た。上野方面のお客さんを訪ねる時は、必ずここへ寄る時間設定をしていたものだ。昔ながらのガラスケースの中に、鏡や銅剣や埴輪や土器類が所狭しと並べられていて、「あぁ、1枚この鏡を持って帰りたいなぁ」などとため息をついたものである。少しカビ臭い部屋の隅で、所在なげに座っている係員のオバちゃんと仲良くなって、あめ玉を貰ったり、写真を撮って貰ったりしたこともある。
まだ「歴史倶楽部」も発足しておらず、そんなに歴史に興味を持っていた訳ではないように思うが、今になって考えると、ここへ通っていたこと等から見て、結構歴史好きだったのだろう。

私はこれまでに、東北地方を除く全国の100以上の博物館を見て廻ったが、幾つか好きな博物館がある。レトロ調の建物に納まっていて、展示品より博物館の建物そのものが素晴らしい所としては、北から行けば、函館市立博物館、小樽市立博物館、石川県歴史博物館、大阪市立博物館、それに、ここ上野の昔の表慶館などである。これらは、その外観を見ただけで、いかにも歴史を感じさせるたたずまいで、私は特に気に入っていた。
建物はどうでも良いが、その建っている環境との調和で好きなのは、浜益村郷土資料館、相澤忠洋記念館、釈迦堂遺跡博物館、八ヶ岳総合博物館 、斎宮歴史博物館、琵琶湖博物館、竹内街道歴史資料館、出雲玉作資料館、太宰府展示館などである。

そして博物館全体のやる気というのか、姿勢というのか、常に高みを目指しているような雰囲気が感じられたのは、房総風土記の丘資料館、釈迦堂遺跡博物館、大阪府立弥生文化博物館、広島県立歴史民俗資料館などなど。

だがやはり、博物館と言えばその収蔵物・展示物である。内容の豊富さと体系的に集められた遺物の数が一番充実しているのは、当然と言えば当然なのだが、ここ上野であろう。
沖ノ島の宝物を集めた「宗像大社神宝館」、九州の弥生時代をかき集めてきたような「福岡市立博物館」も、なかなか充実した展示物を誇るが、この東京国立博物館にはかなわない。
我が国最初の博物館であるし、金と権威を駆使して日本中の遺跡からの出土物を一手に集中して収蔵したので、一番充実しているのは当たり前なのだが、歴史ファンから見れば、ここに来れば日本の著名な遺跡からの出土物が見れるというのは実にありがたい。

出土した遺物はその出土地の博物館へ戻せ、という声があるのは知っているし、私もどちらかと言えばその意見に賛成したいが、一方では、一堂に集められた展示物を1ケ所で見れる利便性も棄てがたい。こういう場所はやはり在った方がいいような気もする。


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