1.はじめに


		当初この本編は、私の古代史観が固まってから製作に入ろうと思っていた。しかし、いつまでたっても
		それは確立されそうにないし、何よりもその史観そのものは絶えず流動的である。
		また古代史学に対する到達点にも、いつまで経っても行き着きそうにないので(そういう地点があるの
		かどうかも不明だが。)、現段階での私の邪馬台国論をここに展開する事にした。従って、年月を経る
		ごとにその内容が変化していく可能性もあるし、いままでこのHPの他の部分で書いたこととは違う意
		見を述べているかも知れない。また書いたことを全面的に書き換えるというような事もありうると思う
		ので、その点は浅学に免じてご了承を賜りたい。ただ、ここに書いた内容が、私の最新の「ヤマタイ国
		論」になるように心がけるつもりでいる。


		私の邪馬台国論に於ける基本的な立場は以下のようなものである。

		(1).邪馬台国は北九州のどこかにあった。まだその位置や都までは特定出来ていない。
		(2).記紀に代表される日本神話に現われる我が国古代の描写は、ある程度の歴史的な史実に基づい
			ているとの立場をとる。書かれていることが史実というわけではない。我が国の弥生時代・古
			墳時代の出来事の或部分が記紀に反映していると考える。
		(3).いわゆる魏志倭人伝は、偽書ではなく正当な中国国史としての価値を認めこれを信用する。
			「春秋の筆法」というような、隠された意味が倭人伝には込められているとの立場は理解でき
			るが、私はその立場には立たない。
		(4).邪馬台国の解明には、内外文献の分析も勿論ながら考古学の成果がもたらす考察も非常に重要
			だと考える。同時に、その他の自然科学、例えば古気象学、文化人類学、植物学、民俗学【形
			態人類学、形質人類学、植物遺伝学、植物考古学、動物考古学、動物生化遺伝学、微古生物学、
			歴史地理学、民族考古学、古病理学、比較言語学、言語人類学、人類進化学、人類遺伝学、民
			族疫学、免疫遺伝学】等々、の研究成果を元にして、総合的にその全容の解明にあたらなけれ
			ばならないと考える。
		(5).邪馬台国が東遷したかどうかについては、現時点では私にはまだ判断が下せない。
		(6).卑弥呼は天照大神である。

		私の邪馬台国研究については、当然、多くの先学から学んだ知識がもとになっているのであるが、一番
		影響を受けたのは、なんと言っても産能大学教授の安本美典氏の一連の著作からである。
		最初は教授の唱えている、私の生れ故郷である福岡県の「甘木・朝倉地方」が邪馬台国であるという主
		張に惹かれたのだが、教授の著作を読み進むうちに、その論理の明確さ、素人にも極めてわかりやすい
		考証、トータルな見地からの分析等々が、それまで読んでいた古代史関係の論考の中ではダントツに輝
		いて見えた。今では、教授の主張全部をそのまま鵜呑みにしているわけではないが、それでも歴史や考
		古学が専門の学者達の著作や主張に比べれば、安本教授の説が一番論理的・合理的と思える。
		それに、マスコミの偏向報道に対する抗議や、「東日流外三郡誌」(つがるそとさんぐんし)偽書問題
		に対する追求姿勢などは、事なかれ主義、諦念渦巻くご都合主義の蔓延する学会にあって、一人気を吐
		く孤高な戦士の姿さえ彷彿とさせる。
	
		ともあれ、そういうわけで私の邪馬台国論とそれを取り巻く古代の姿は、安本氏の唱える説に大きく影
		響されていることは事実である。そんな中にあって、私なりの考えもふまえて、どこまで行き着けるか
		はわからないが、この「邪馬台国論」を書き進める事にしたい。
		平成16年7月盛夏


邪馬台国大研究・ホームページ / わちゃごなどう?/ 本編